弁護士と司法書士の違い
平成15年の法改正により,司法書士に140万円以下の借金についての交渉権と簡易裁判所の訴訟代理権が認められました。
これにより,借金の金額が140万円以下の場合には,債務整理手続を弁護士だけでなく,司法書士に依頼することが可能となりました。
但し,下記のような違いがありますので,債務整理を依頼する際には以下の点に注意が必要となります。
自己破産・民事再生の場合
自己破産や民事再生は,地方裁判所に申立を行う必要があることから,司法書士には訴訟代理権がなく,司法書士は書類の作成のみを担当するので,申立は自分で行うことになります。そのため,自己破産・民事再生の場合には,弁護士と司法書士のどちらに依頼するかで差が出てきます。
司法書士に依頼した場合には,あくまで本人が申し立てたことになりますので,裁判所との複雑な対応を要求されます。
管財事件人なる場合に差が生じます。例えば,東京地裁に申し立てる場合,個人の自己破産で弁護士が代理人につかない本人申立の場合には,裁判所へ支払う予納金は50万円以上となることがあります。手続も複雑になります。
一方,弁護士が代理人についている場合には,少額管財手続となり予納金は20万円程度で済み,手続も簡略化されています(即日面接制度)。
横浜地裁の場合も,弁護士が代理人とし申し立てる場合は,手続きが簡略化されています(早期面接制度)。
このように,裁判所によっては自己破産の申し立てについて代理人弁護士に対する信用を前提とした簡略な手続きが用意されており,弁護士に依頼することによりこれを利用することができるというメリットがあります。
以上のような違いから,自己破産・民事再生では,弁護士に依頼した方がメリットが多いようです。
任意整理の場合
借金の総額が140万円以下で任意整理を依頼する場合や140万円以下の過払い金の回収を依頼する場合には,司法書士にも交渉権が認められていますので,弁護士と司法書士のどちらに依頼しても基本的には違いはありません。
(ただし,140万円を越える場合は司法書士に交渉権はなく,弁護士に依頼することとなります。)
ただし,過払い金が140万円を超え,任意での和解が困難な場合には,地方裁判所に訴訟を提起することになります。
地方裁判所では,簡易裁判所と異なり,原則として弁護士以外の人は代理人になることができませんので,貸金業者も弁護士に依頼せざるを得ず,弁護士費用が掛かることになります。
そのため,地方裁判所では,貸金業者が無駄な費用を抑えるために早期に和解に応じてくることが多くあります。
このことから,実務では弁護士を代理人にして,過払い金が140万円以下の場合にも,数名を集めて集団訴訟を提起したり,慰謝料や弁護士費用を請求することによって140万円を超える金額を請求して,早期に解決させるという方法をとっています。
このような実務上のテクニックを駆使できるかどうかも,弁護士と司法書士の違いとなります。